2011年8月19日金曜日

iJAMP連載 ~インタビュー №1~

〇時事通信iJAMPで首長コラム・インタビュー連載中!
〇中村 時広  愛媛県知事のインタビュー

(2011年8月9日配信時事通信社iJAMPより)


◇職員はどんどん現場に
 中村時広・愛媛県知事

松山市長を3期11年半務めたのち、昨年12月に就任した愛媛県の中村時広知事(なかむら・ときひろ=51)。全国で4例目となる課長級昇任試験を今年度から導入するなど、県政の活性化に力を注ぐ。
 課長級昇任試験は松山市長時代にも導入。同市では既に10年の実績がある。その理由について知事は「ユニット責任者として権限を付与されるので、それなりのハードルがあっていいと思う」と話す。また、基礎自治体重視の県政を推し進めるため、4月の人事異動に伴い市町との人事交流を大幅に拡大した。「地域に飛び出す公務員ネットワーク」を応援する首長連合の発起人にもなり、「日々の業務で、県職員は住民と直接接する機会がない。どんどん現場に足を運んで、市町の職員ができないことをカバーしてほしい」と訴える。市長時代には、市から権限・財源を移譲する「まちづくり協議会」を地区ごとに設けるなど、現場重視の政策を行ってきた。
 再稼働が見送られている伊方原発3号機については、「再稼働は白紙」と繰り返し強調。一方で、四国電力に対しては、(1)原子力本部の松山市移転(2)国の求める電源対策に加えた追加的な電源対策(3)独自の揺れ対策(4)異常があった場合は速やかに県へ連絡する「伊方方式」の報告体制(5)半径20キロ圏内住民の全戸訪問―の五つの要望を突き付け、実現させた。中村知事は「四国電はこちらの要望に全部応えた。他とは全然状況が違う。あとは経済産業大臣が来て、僕と話し合って文書で安全・安心を確約をすることが必要。その後、地元や安全委員会に(稼働の可否を)投げ掛けたい」と語る。
 全国知事会では社会保障制度を担当する。6月の国との意見交換会では、持ち前の積極性で与謝野馨経済財政担当相とやり合った。「(財務省からは)消費税をどれだけ上げる必要があるかという資料しか出てこず、地方の事業などが全く出てこない。消費税を上げるための財源会議のようになっている。国は地方の現場を知らない」。
 市長時代から目指していた、四国へのプロ野球球団誘致にも熱心だ。東北楽天イーグルスや日本ハムファイターズを誘致した宮城県や北海道のような地域活性化が狙いだ。「四国4県で唯一、(松山市の)坊っちゃんスタジアムだけが3万人を収容できる。公式戦は中心を坊っちゃんにして、残りを3県で消化するのが理想。これから足りないものを洗い出して分析していく」とビジョンを語る。

〔横顔〕
 東京で商社マンとして働き、愛媛県議を経て93年衆議院議員に初当選(1期)。99年松山市長となり、10年12月から知事に。趣味はジョギングで、週に1~2日走っている。
 
〔県の自慢〕
 「たくさんあるが、東予2次、中予3次、南予1次というように、地域ごとに産業別の特徴があること。見事に産業基盤が分かれている。これからの戦略を考えるに当たって大きな自慢になる」(中村知事)。

 〔ホームページ〕http://www.pref.ehime.jp/

(松山支局・石坂千絵)(了)(2011年8月9日配信)

2011年8月9日火曜日

iJAMP連載 ~首長コラム №4~

〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇鈴木 英敬  三重県知事のコラム
(2011年7月28日配信時事通信社iJAMPより)


★現場感覚磨き、地域に果実を
 三重県知事・鈴木英敬

私は、経済産業省に在籍していたとき「スーパー公務員養成塾」を主宰し、全国各地を飛び回っていた。その意味では、「飛び出す公務員」の先駆けと言えるのではないかと思うし、飛び出す公務員の皆さんとは価値観を共有していると自認している。
現在は、三重県知事という特別職になったが、「日本一現場に飛び込む知事」を目指しており、そのスタンスは変わっていない。
今回、「飛び出す公務員を応援する首長としての想い」を伝える機会をいただいたので、そもそも何のために「飛び出す」のかという目的や意義、さらに飛び出して何をするのか、そしてそれをどう成果に結び付けていくのかについて考えてみたい。
自治体が政策を立案し、事業を実施する上で最も大切なことは、「地域住民の皆さんの目線、立場」に立って地域の皆さんに「果実」を届けることである。そのためには、地域に飛び出す必要がある。
よく自治体から国の省庁を評して「霞が関は現場が分かっていない」ということがある。
しかし、あえて言うならば少なくとも、基礎的自治体である市町村に比べて都道府県、特に本庁は概して現場を分かっているとは言い難いのではないか。都道府県庁も「ミニ霞が関」になっていないかと危惧する。
自治体が、国の事業執行官庁であった時代は、それでもある程度は役割を果たせたかもしれないが、政策立案官庁になり、地方政府の役割を果たすためには現場を知る必要がある。
そのために、例えば、自分が住んでいる地域で自治会活動やPTAなどの役員に進んでなってみてはどうかと思う。そして一住民の立場で自分の地域の役所と話をしてみる。そうすると、行政の非効率な部分や住民の皆さんの立場を肌で感じ、自らの仕事の姿勢を見直すきっかけになる。また、地域の役員になって汗をかくことで住民の皆さんと「顔の見える関係」を築くことができ、協働を呼び掛けることができやすくなる。
都道府県は市町村に比べて圧倒的に現場が少ない分、現場感覚を磨くために、休日も使って積極的に地域に飛び出してほしいと思う。
かつて某洋酒メーカーでは「一番優秀な社員は外回りをし、次に優秀な社員が社内を回り、もっともできない社員がデスクワークをしている」と言われたことがある。
この例に学び、志ある公務員は「お役所仕事」という不名誉な言葉を改めてもらえるよう、寸暇を惜しんで、地域に、現場に飛び出してほしい。そして、地域の皆さんに果実を届けるため、その成果を皆さんの自治体の経営に生かしてほしいと切に願っている。
皆さん、ともに汗をかき頑張りましょう!(了)

(2011年7月28日)

鈴木 英敬(すずき・えいけい)氏のプロフィール
1974年生まれ。98年通商産業省に入り、内閣官房参事官補佐、経済産業省地域経済産業グループ地域経済産業政策課長補佐などを歴任。2011年4月の三重県知事選で、現職知事としては最年少の36歳で初当選した。座右の銘は、失敗も成功も自分に原因があるという意味の「万物我に備わる」(孟子)。

2011年8月1日月曜日

iJAMP連載 ~首長コラム №3~

〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇小坂 泰久 千葉県酒々井町長のコラム
 (2011年7月21日配信時事通信社iJAMPより)



★地域の相談に対応できる「総合職員」を育成
 千葉県酒々井町長・小坂泰久

今、日本は、少子高齢化の進行、それに伴う購買力の低下、経済・資本のグローバル化の中で日本企業の競争力の低下など、国および地方の税収は大幅に低下し、一方で高齢化に伴う社会保障費が増大しています。また、平成の大合併、地方分権時代の到来等、ここ10年で地方公共団体を取り巻く環境は大きく変化し、厳しい財政事情を背景に、多くの団体において、行政の効率化や健全財政への取り組みが行われています。
 そうした中、今後も行政サービスを維持・向上していくためには、職員の意識改革と能力アップは必要不可欠であり、職員が自ら課題を発見し、その解決策を考え、そして実行する能力がどれだけ備わっているかによって、その自治体の将来が、大きく変わってくるものと思っています。
 わが酒々井町は、人口約2万人余り、面積は19平方キロメートルとたいへん小さな町です。
 現在、町内には約40の自治会があり、防犯、福祉(独居老人の把握)、子育てに関する相談、自助共助の体制づくりのお手伝い等々、自治会共通の、また、地域ごとの課題に対し、きめ細かな対応が求められています。
 こうしたことから、当町では、職員の中からそれぞれ地域担当員を選任し、地域と行政とのパイプ役として地域活動を支援し、地域とのつながりを強くする取り組みを行っています。
 また、自発的な職員の取り組みとしては、現在、酒々井町職員ボランティア「美SHISUI21」が環境美化活動として、勤務時間外に町内の清掃を行うなど、地道な地域活動の芽が育ち始めました。
 今後は、さらに職員自らが率先して地域に飛び出し、地域活動を通じて住民との信頼関係を深められるような環境づくりのため、首長として、支援や体制づくりに努めてまいりたいと考えます。
 また、時には自分自身も応援隊として出動し、地域の活動を盛り上げてまいります。
 しかし、地域住民との信頼関係を築くということは容易ではありませんので、職員一人ひとりの総合性・総合力を高める必要があり、職務における専門性の他に、地域のあらゆる相談に応じられる対応力を身につけた「総合職員」となれるよう人材育成に努力してまいりたいと考えます。
 地域に飛び出す公務員を志す職員の皆さんには、ぜひ、自己研鑚(さん)と自己改革を重ね、全国に志を同じくする仲間とのネットワークにより大いに交流を深めていただき、挑戦し続ける公務員であってほしいと念願しています。(了)

(2011年7月21日)

小坂 泰久(こさか・やすひさ)氏のプロフィール
 1948年千葉県印旛郡酒々井町生まれ。早稲田大学教育学部理学科を卒業後、72年に千葉県庁に入庁。県土整備部大多喜整備事務所長、県土整備部河川計画課長などを歴任し、2005年12月酒々井町長に初当選。現在2期目。生活機能の整った歩いて暮らせる成熟したまち、すべての人が安心して暮らせる「コンパクトシティ酒々井」を目指した取り組みを進めている。