2011年9月21日水曜日

iJAMP連載 ~首長コラム №6~

〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇井原 巧  愛媛県四国中央市長のコラム
(2011年9月15日配信時事通信社iJAMPより)

★公務員と地域住民のつながりが地域の力
  愛媛県四国中央市長・井原巧

東日本大震災から早くも半年がたとうとしていますが、復興へのほのかな兆しは感じられるものの、復興まちづくりの道筋はいまだ見えてこず、ただ無情にも時間だけが過ぎ去っているように感じます。そのような情勢の中、自治体を預かる私どもも、歯がゆい思いを抱きながら、できる限りの支援を行っており、被災地支援の庁内公募には多くの職員が名乗り出て、支援活動に赴いてくれています。また、市民や企業の方々からは多くの義援金や救援物資などのご恵贈に加え、現地を訪れて被災者の方々と直接つながる支援活動をしていただくなど、感謝してもしきれないほどのご好意を頂いています。一方では、市職員らがボランティア休暇を利用して現地に赴く動きもあり、頼もしい市民や職員に恵まれ心強く思っています。
さて、そのような中で、私が会長を務めさせていただいております全国青年市長会でも、会員市の連携による独自の復興応援の取り組みを開始いたしました。
まず、この全国青年市長会についてですが、当会は49歳までに当選した市長で構成され、現在57市長が在籍しております。今回の震災で甚大な被害を受けました岩手県陸前高田市の戸羽太市長も会員であり、当会では志を同じくする仲間として陸前高田市の復興を応援する運びとなりました。ただ、陸前高田市も私どもも何をすれば復興の力添えになるか分からず、数人の会員で5月に各界の仲間とともに現地を視察いたしました。津波で流された街を見て、「道路や堤防ができるだけではこの街の復興にはならない。街に図書館などの文化施設、スーパーなどの商業的施設、病院などの医療施設等々、官民の力を結集した都市基盤整備が必要であり、特に地元民間事業者の復興が重要である」と感じました。
そこで、視察を踏まえて何ができるかを協議した結果として「陸前高田市復幸応援プロジェクト」がスタートしました。このプロジェクトでは、陸前高田市に8月から「復幸応援センター」を設置し、会員市の職員が2~3カ月交代で滞在して情報収集を行い、各会員市へ陸前高田市のニーズを発信します。そのうえで対応可能な市民力を持つ会員市をマッチングし市民団体等のネットワーク化により支援の輪を広げていくことを目指しています。私どもが言う市民力とは、各会員市の産業や各種団体などの新しい公共の担い手としての市民の力であり、こうした取り組みが今後の被災地支援のモデル事業となればと思っています。
また、この事業の一番のポイントは被災地での情報収集です。派遣された職員には、被災者や各種団体への思いやりを持って、きめ細やかなニーズをくみ上げ、会員市へ発信してもらいたいと思います。そのためには、地域に飛び出し、住民と親交を深め、心を開いて話ができる関係を構築しなければなりません。ただ、これは公務員と地域住民との本来の関係性であり、地域が変わったからといって肩肘を張る必要はありません。出身自治体の地域住民と触れ合う場合と同じスタンスで向き合い、心の声を聞いてほしいと思います。
私は常々、基礎自治体に属する公務員は、少なからず地域に飛び出し、清掃活動や地域イベントなどに、プライベートな時間を割いて参加してくれていると思っています。そういった職員がより活動しやすい環境づくりを行うことで、地域との絆を深めていただき、災害時や緊急時にも職員と市民の皆さまが協力し合えるパートナーシップを築きたいと思っています。
がんばろう日本!!がんばろう地域コミュニティー!!(了)

(2011年9月15日)

井原 巧(いはら・たくみ)氏のプロフィル
1963年四国中央市生まれ。専修大学卒業後、国会議員秘書を経て、95年より愛媛県議会議員を3期務める。2004年4月、「四国一質感の高いまちを目指して」を公約に掲げ、初代四国中央市長に就任。現在2期目。(了)

2011年9月13日火曜日

iJAMP連載 ~首長コラム №5~

〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇鈴木 俊美  栃木県栃木市長のコラム
(2011年9月5日配信時事通信社iJAMPより)


★強く、やさしく、頼れるまちづくり
 栃木県栃木市長・鈴木俊美

栃木市は、2010(平成22)年3月に栃木市、大平町、藤岡町、都賀町の旧1市3町が合併して誕生した栃木県南部に位置する人口14万人の市です。私は、旧大平町長を3期務めた後、新生栃木市の初代市長として市政を担っています。
私のマニフェストである「栃木クリエイト宣言」では、まず初めに「市民協働のまちづくり」を掲げています。行政は、すべての市民に、将来にわたって安定した質の高いサービスを保証していかなければなりません。そのためには、行政が「してあげる」、市民が「してもらう」という関係から脱皮して、行政が市民や市民団体、NPO、企業などと協働・連携してまちづくりを推進していくことが必要です。
現在、まちづくりの基本となる自治基本条例を策定中ですが、旧栃木市の自治基本条例では、「協働のまちづくりを推進し、市民自治を確立すること」を目的として掲げていました。また、旧大平町の自治基本条例では、「自らも地域の一員であることを自覚した住民の信頼の獲得」を職員の責務として位置付けていました。これらの考え方は、新市の自治基本条例にも生かしていきたいと考えています。
栃木市の中心部を巴波川(うずまがわ)が流れていますが、栃木市はこの巴波川による江戸との舟運で栄えたまちです。母なる川と言われる巴波川も昭和の末期には、水量の低減と家庭雑廃水の流入などにより、河川の汚染度が全国でワースト10に入ってしまうような状況でした。清流復活のために行政としても施策を講じましたが、最も効果的なものは、市民協働による巴波川一斉清掃でした。以来、多くの市民と職員が協働して、年に3回の一斉清掃を行っています。今では、清流がよみがえり、市民団体が蔵の街遊覧船による舟行を行っており、観光客の皆さまに蔵の街の風情を楽しんでいただいています。
「とちぎ協働まつり」は、今年で8回目を迎えますが、このイベントは実行委員会と市の共催で実施しています。ただし、市としては「ゼロ予算事業」です。実行委員会作成の「協働ステッカー」による市民や市民団体、企業の協賛によって財源を確保しています。ステージのエリア、冒険のエリア、ふれあいのエリア、行政のエリアなどさまざまなエリアを市民と職員が協働して手作りで企画、運営しています。
栃木市における協働の代表的な事例を紹介させていただきましたが、今後とも共通の目的を持った幅広い協働のパートナーと活動を行っていきたいと思います。
栃木市は本年10月には西方町と合併し、さらに大きな栃木市になります。新生栃木市は、歴史や文化・伝統、街並みの景観等に裏打ちされた「しっとりとしたまち」であると同時に、自然や観光、商・工業等に支えられた「アクティブなまち」であることを目指します。そのためには、新市の一体感の醸成が必要であり、市民と職員が「オール栃木」で活動していかなければなりません。私も飛び出す市長として、飛び出す公務員の先頭に立って走っていきたいと思っています。「強く、やさしく、頼れる栃木」を創るために。(了)

(2011年9月5日)

鈴木 俊美(すずき・としみ)氏のプロフィル
1950年栃木県下都賀郡大平町(現栃木市)生まれ。中央大学法学部を卒業後、80年に弁護士登録。99年栃木県議会議員。2000年9月に大平町長に就任(3期)。10年4月に「栃木クリエイト宣言」を掲げて、合併後の栃木市初代市長に就任。座右の銘は、大空と海が広々としているように、度量が大きく、こだわりのないことを意味する「天空海闊(てんくうかいかつ)」。

2011年9月1日木曜日

iJAMP連載 ~インタビュー №2~

〇時事通信iJAMPで首長コラム・インタビュー連載中!
〇白石 勝也  愛媛県松前町長のインタビュー
(2011年8月19日配信時事通信社iJAMPより)


◇「公務員も現場主義」を強調
 白石勝也・愛媛県松前町長
 「記者は現場に行かないと仕事にならない。公務員も同じ」。元NHK記者の経歴を持つ愛媛県松前町(3万1300人)の白石勝也町長(しらいし・かつや=71)は「現場主義」を強調する。NHK時代は静岡、高知、松山などの各放送局で勤務し「机に座っていては仕事にならない」ということを身をもって経験しているという。
 「地域に飛び出す公務員ネットワークを応援する首長連合」の発起人も務めており「地域に出て行きいろいろな人に会って今地域で起こっていること、住民が困っていることを聞きだすことが公務員に求められている」と、職員が積極的に地域に飛び出していくことを応援する。
 職員と住民の交流の場として、祭りやイベント、敬老会の集まりなどを挙げる。「役場の職員でも、家に帰れば地域住民の1人。地域活動に参加していると、これは役場でやったほうがいいなどと気づくことがある。それが仕事に生きてくる」と意義を強調する。
 そのためにも「職場で地域に出やすいような雰囲気を作ることが大事。職員が自然に地域に入っていけるように後押ししてほしいと幹部に話している」と町長は語る。こうした幹部の努力により、地域に出ている町職員は多いという。「消防団にも積極的に参加するなど頼りにされている。地域の人も親しみを持ってくれる」と手ごたえを感じている。
 さらに、県町村会長として地域主権にも意見を述べる。「国に陳情していく時代は終わったと思う。地域として何ができるのか、それを考えて自主的な判断ができるようにしないと地方分権はできない。合併により愛媛県は20市町となった。知事を含めて首長は21人。皆で話し合って地域のことは自分たちでやるという意気込みでいけば、良い愛媛県ができる」と期待を込める。

 〔横顔〕
 趣味はカラオケ。「スナックでゆっくりと歌いたい」。記者時代の転勤先の友達を訪ねる旅行もしたいという。

 〔町の自慢〕
 北には重信川、西は伊予灘に面した塩屋海岸が広がる。小さい町だがJRと私鉄が走り、道路も整備されていて、松山市へのアクセスも良い。

 〔ホームページ〕http://www.town.masaki.ehime.jp/

(松山支局・光石連太郎)(了)(2011年8月19日配信)